藁ができるまで

はしだてが育てる稲わら

はしだてでは、わら細工・しめ縄の本来持っている美しさをお届けする為には、素材となる稲わらの良さにこだわる事が大切だと考えています。
水や肥料の量を調整しながらより綺麗で美しく造形できる稲わらを育てるために地域の農家の方々と共に取り組んでいます。

はしだてでは、わら細工・しめ縄用に古代米と呼ばれる稲の原種に近い品種を育て、稲穂が実る前の青々とした状態で刈り取る「青刈り」を行っています。もともと青刈りと言う手法は、減反政策の転作の一環として始めました。米を作りすぎないように、かつ田んぼを荒らさないように、稲を植えて加工用の稲わらとして刈り取ります。

農地は一度荒らしてしまうと再び元の状態に戻す事が難しく、荒廃農地を出来る限り少なくできるようにと地域が一体となり取り組んでいます。
青刈りを行うことですぐに米作りを再開することができるように農業を守りながら稲わらを育てています。

藁ができるまでの流れ

稲を育てる

芽出し/田起こし・代掻き(しろかき)

「塩水選」で種籾を選別し一旦乾燥させます。塩水選とは水稲苗を育てるためにより元気な籾種を厳選する作業のことです。
その後、発芽に十分な水分を吸収させる為に1週間程度かけて浸種を行います。浸種が完了した種籾は風をあて表面を乾燥させてから、育苗箱に出来るだけ均一に撒き、ビニールハウスにて発芽させます。通常5日位でほぼ全ての種籾が芽を出し、1か月程度で15㎝程に成長したら芽出しは完了です。芽出しと並行して田んぼの準備も始めます。
4月下旬頃に田んぼの土を混ぜる田起こしを行います。その後田んぼに水を溜め土を柔らかくし、代掻きを行います。代掻きは、土を砕いて平らにしていく作業のことで、稲をしっかりと育てる為にはとても重要な作業です。

3月
下旬から
5月

田植え

ビニールハウスで育てた苗を田植え機で丁寧に植えて行きます。
出来るだけ真っすぐ均等に植える事で育ちも良く、刈り取りもスムーズに行うことができます。

5月中

稲の成長

青刈りの藁は出来るだけ長く伸びるように毎日の水の管理と草刈、適宜肥料を撒き長さと色味を調整していきます。
この日々の管理が良い藁を育てる為にはとても重要な事です。

~7月
下旬

藁をつくる

こうして育ててきた稲を7月下旬の最も暑い季節に、一番青々とした綺麗な状態で刈り取りを始めます。
植えてから約100日で穂を出す為、その10日程前には刈り取りを終わらせなくてはなりません。その年の気候や、稲の成長具合を見て刈り取りの開始日を定めます。段取り良く約2週間内にすべて刈り取りを行います。

7月
下旬〜
8月
中旬


青刈り

刈り取った藁は、その日のうちに乾燥機にかけます。藁を隙間の無いように乾燥機に綺麗に並べ、約80度の熱風を8時間~10時間かけることで藁の青さを残したまま綺麗に乾燥することが出来ます。
青刈りの藁はお米をとったあとの枯れた藁と違い、水分をたくさん含んでいるためここでしっかりと乾燥することが重要です。このことで虫等の害虫を排除し、カビや変色などを大幅に抑えます。

乾燥

藁すぐり

乾燥機にかけた藁には、枯れて変色してしまったものや藁クズなども付いているため、丹念に取り除く作業をします。この選別作業を丁寧に行うことで、より綺麗なわら細工の素材となります。


すぐり

選別された藁は温度と湿度がほぼ一定に保たれるように調整された保管庫に移します。
乾燥してしばらくの藁はとても硬いため、わら細工に適しません。1か月ほど寝かせることでわら細工に適した素材となります。

藁づくりの
完成

わら細工

米の副産物である藁は私たちの営みに欠かすことのできない存在でした。
藁はさまざまな物に形を変え、日常生活の中に深く根ざしていきました。今で言う「ひも」はそのほとんどが藁で綯った縄を使い、履物には草履やわらじ、雪国では雪ぐつや深ぐつなどを藁をつかって自作していました。
この他にも防寒具として「みの」や雨よけ兼日傘として「スゲ笠」、調理用具として「鍋敷き」や「おひつ」、敷物には「むしろ」や「こも」、保管用の入れ物として「俵」や「かます」など、数え上げたらきりがないほど藁は生活になくてはならないものでした。